1年で変革してきた営業組織の在り方

――まず、御社の事業内容と、辻村様がマネジメントされている営業本部の活動について教えてください。

辻村様(以下、敬称略)
弊社はSI事業(*1)のため、人材アウトソーシングの提供やシステムのソリューションを行うことがメインです。オンサイトによるSES(*2)が7割の割合で受託でのシステム開発系が3割、システムと言いながらもクリエイティブの人間もいてエンジニアが7割に対してクリエイターが3割います。そこからメンバーはオンサイト(クライアント先常駐)、オフサイト(社内)に分かれて稼働しています。

*1 SI事業:システムインテグレーション事業のこと。 ITシステムの構築において、戦略立案から設計、開発、運用・保守・管理までを一括で受託する専門事業。
*2 SES(システムエンジニアリングサービス):システムの開発や保守・運用における委託契約の一種。主にクライアント先に常駐するかたちで技術者の労働を提供する契約。

営業としてはメインが人材アウトソーシングの提供で、受託の案件はSESでアウトソーシングしているお客様先からご相談いただくことが多くあります。
現在、営業本部にはメンバーが16名いまして、本部長1名、部長2名、マネージャーが4名、さらにリーダー/サブリーダーが4名、あとは一般職のメンバーで構成されています。

――辻村様がマネジメントに入ったのは1年前と伺いました。そこからはどのように取り組んでこられたのでしょうか。

辻村
活動としては、SI事業なので人材アウトソーシングとソリューションを既存顧客へ提供していくのが定常的にあって、新しいところでは、IT業界の動向を見ながら、新規のお客様にどうアプローチをしていくのか、そういうところにマーケティングを活用したり、新規のメンバーに考えてもらったりして進めてきました。

また営業本部を見るようになって大きく変えようとしてきたのは営業組織としての在り方です。営業組織として、しっかりとピラミッド型になっていなかったので、その整備を1年かけてやってきました。

――マネジメントを担当されるまで、組織はフラットだったのでしょうか?

辻村
そうですね。正直、営業は個々で戦うっていう意識が強かったですね。メンバーがそれだけ個々で力を持っていたということでもあります。
ただ、私はもともとエンジニア出身で、例えば10名メンバーがいれば、チームで成果を出すことで10名以上の成果を出せるという考えだったので、営業本部も力あるメンバーが連携すれば2人でも2人以上の成果が出せると感じていました。そのため、まずは組織としてピラミッド型にすることに気をつけてやっていました。

既存顧客への営業活動を主軸に

――営業活動ではどのようにアプローチをされていますか。

辻村
お客様にもよりますが、オンサイトで大きいプロジェクトがたえず動いているため、次の開発時期を教えていただき、そこから提案する場合があります。

また、オンサイトで参画したメンバーの状況確認やヒアリングと合わせて提案活動を行うなど、業務フローに自然と組み込まれてルーティン化されているケースもあります。

新規に関しては私が入る前までには担当もいましたが、新規のお客様に提案をしても、そこにアウトソーシングする人材がタイミングによって変わってきてしまうので、マッチングするのが難しい状況でした。今は新規のお話をいただいた時には、対応できるエンジニアとソリューションまで私がヒアリングして、その情報を集約し割り振りができるようなかたちをとっています。

――営業本部に入られてからはどのような課題を感じられていましたか?

辻村
先ほどお話した通り、私が営業本部を見るようになって、営業組織の整備を1年かけてやってきました。課題としては、営業本部の「数字を上げるための戦略」と「組織を作る戦略」とのシナジーがうまくできなかった点があげられます。組織を作る方に重点を置いていたため、「それをやるならこういう風にやった方が良いんじゃないか」と考えられる力のあるマネージャーがいるにも関わらず、裁量を与えて実行してもらうことができませんでした。

マネージャー陣の本音が可視化された「戦略に対する納得度」

――STRABO診断後、結果をご報告させていただきましたが、もともと感じられていた課題は数字に反映されていましたか?

辻村
そうですね。この辺りを改善しないといけないなと思っていたところが。納得度と充足度との差異として大きく出た「市場や顧客パートナーとのコミュニケーション活動」ですね。

実際、コミュニケーション活動の中で、やらなければいけないと共通で理解していても実行できていない動きがありました。具体的にどう進めていくのが良いかと、営業本部内でちょうど話し合っていたタイミングで顕著にスコアとして出たなと思いましたので、改善していかなければならないし、いま、正に進めているところです。

あとは「導入システムやツール」の納得度と充足度との差異に関しては、営業する上での効率化やツール導入の必要性はあるとも思うので、基本的に結果を見て思い当たるところはありますね。

収穫としては、こうして数値化して見えることで、課題として意外と大きいのかもしれないと、私自身把握ができたことで、優先度を上げていかないといけないところがわかったのは大きいですね。

――階層別に見るとリーダーと比べてマネージャーの方の納得度が低く出ている傾向ですが、ここは組織構造的な課題でしょうか?

辻村 少し先ほどと重複しますが、営業本部全体を俯瞰してみたときに、ピラミッド型組織を構築するという組織構築の戦略からはじめ、当然ですが、数字をどう積み上げていくか、そのために若いメンバーをどう育てていくのかといった部分も並行していたので、マネージャーによってはやはり組織や体制の話よりかは数字をあげるためにこうしたら良いんじゃないかといった意見があったと思うんです。そういうところが数字に出ているんだと認識しています。

――実際、現場の声はどうだったのでしょうか。

辻村
マネージャーによって領域が分かれていて担当するのがオンサイトだけだったり、逆にオフサイトだけだったりと提案領域が違っていてある意味縦割りにも近いので、属人的にやりたいというのはあったと思います。もちろんみんな数字を上げていくために個別に動きたいっていうポジティブな動機ですね。

ただ、マネージャー同士が連携することでもっと効率が上がるのにと思うことは多くありましたので、協力体制は強固にしたいと思っています。

診断結果をもとに変更に至った「ビジョン共有」の方法

――個々が意思を持って、活動されているというのは、組織的にすごく素晴らしいですね。その上で組織としての一体感や合意形成感はどのように作っていかれているのでしょうか。

辻村
それでいうと、最近は生きのいいマネージャーの意見もあがってくるようになってきましたし、11月からは、月毎に各マネージャーが打ち出す施策について取り組んでいくなど、マネージャーが軸となる施策を打っていく方針にはしたので、全員が納得の上で、施策や業務を推進していく流れは作っていけています。

もともと個々で営業していくスタイルでしたので、ここまでくるのに1年はかかりましたけど、本部自体は良いかたちになってきて成果も出てくるようになりました。11月からは新しいかたちでスタートして、ここからさらに良くなるのではないかと思っています。

――なるほど。組織変革は場合によっては数年がかりですものね。逆に実施の結果を見られて、これまでになかった新しい気づきはありましたか?

辻村
戦略面の打ち出しが少し弱いかなっていうのは、この結果を見て思いました。 会社としてビジョンを掲げていますが、そのビジョンに向かっていくために、営業本部は、どんな価値を共有してどういう戦略でいくのかを、私から部長までは伝わっているのですが、部長から伝わっていないなっていうのが戦略における理解度、納得度の結果から気づきました。

やはりピラミッド型組織を作りたいがゆえに、部長に落として、部長からマネージャーに落とし込んでもらうっていうかたちをとっていたのですが、それも今は止めて、営業本部のメンバー全員を集めて通達するかたちにして営業本部の全員が合意して同じ認識で進めていく方向性に変えました。
STRABOの診断結果を見て、これはまずいなと思って変えたことの一つです。

――確かにビジョンや指針など割と抽象的な概念を言語化して人に教えるって、その人のスキルの有無もそうですし、自身が深く自分のものにしていないと難しいですよね。

辻村
そうですね、うわべだけになってしまいますね。

――逆にマネージャーに裁量がないと、中間管理職側の納得度とか理解度が下がってくると思いますが、その点についてはいかがですか?

辻村
その通りで裁量はあった方が良いですね。ただ、裁量を持ったマネージャーが部長の指示を聞きながら具体的に現場に落としていくみたいなところは、マネージャーが肝になってくるので、やはりマネージャー教育が一番必要だということは、この結果を見ても非常に感じているところです。

アンケートでわかった社員のエンゲージメント

――ここ最近、HR techと呼ばれる分野ってすごく成長分野でありますけども、いわゆるエンゲージメントやモチベーションなど、そういった社員のエンゲージメントをあげるような取り組みは行っていますか?

辻村
やはり会社として必要性を感じていて何かをやらなきゃいけないという話にはなっていて、具体的には人事部で検討してもらっている状態です。また私が担当する営業本部、ソリューション本部では、キックオフと言いますか、本部ごとに月1回必要メンバーで集まって振り返りをやっています。

あとは社内での交流に関してアンケートをとったら「仕事で集まるのではなく、飲み会だったらいきます」といった答えが9割5分ぐらいかえってきたケースがあって、みんなそうした時間が欲しいんだなと気づいて定期的にそのような場をつくった部署もあります。

弊社の場合、プライベートの充実を大事にしている人も多く、フットサルが好きな人で集まって試合をしたり、自転車が好きな人たちが荒川沿いでサイクリングしたりしているのですが、旗振り役がいれば、賛同者が出て盛り上がることがわかったので、いろんな声がけをする方向になったのは、会社の雰囲気として今変わりつつあるところですね。

全員がソリューション提案ができるように

――組織運営の取り組みや、より良い組織運営体制の展望など、今後のご意向があれば教えていただけますか。

辻村
小さい話になってしまうかもしれないのですが、会社の営業マンとして目指しているところは、全員がソリューション提案ができるソリューション提案マンになってもらいたいんです。というのも人材のアウトソーシングの提案だけにとどまっている若いメンバーや、ソリューションの経験・知識がまだ少ないようなメンバーもまだいるためです。

私がエンジニア出身だからなのかもしれないんですが、エンジニアあがりの営業マンみたいに、やっぱり営業もテクニカルスキルを磨かないといけませんので、スキルの底上げっていうところを、課題としてとらえています。

営業本部としては、マネージャー陣が自分なりに良いアイデアを持っていますので、どんどん出してもらって良い取り組みをしていきたいなっていうのがあります。

また、ちょうど11月から20期で節目の期になりますので、大々的に社員を増強しようという動きや、ソリューション本部、エンジニア側で、新たな事業と言いますか、インフラ事業と、テスト系の事業を強化しようとしていますので、そういったところの営業活動にも遅れをとらないように底上げをしていかなければならないと思っています。

――STRABOは組織としての業績を生み出す力、実行力を指標化しようという趣旨でレポーティングしたものとなりますが、今後、期待したい機能などがあれば教えてください。

辻村
掲げた計画とか内容に対して、できている、できていないっていうのはだいたいわかるのですが、それを定量化して表現できるようなものがあれば良いと思いました。

例えばメンバー自身は100点のようにできていると言っているけれど、診断によって実際には70点もできていないなどと可視化されて、それをもとに課題がタスク化され、タスクを実行していけば100点に改善されるみたいになれば、説明の余地もなく「点がとれてないところを改善していってほしいです」といった話ができるようになるので話が早いですよね。

――わかりました。今後のプロダクト改善のために参考にいたします。本日はありがとうございました。

インタビュアー PROFILE

株式会社エムエム総研

取締役 河村 芳行

テレマーケティングやインサイドセールスなどのリアルコミュニケーションからデジタル領域にわたり、マーケティング活動全般のプランニングを担当。 日本国内企業の更なる発展に向けて、マーケティングの普及を目指し、ITproマーケティングなどセミナーにて講師、パネラーとして講演。外資系、国内大手IT企業に対して多くのプランニング実績を持つ。共著として『少人数チームからはじめる失敗しないBtoBマーケティングの組織としくみ』がある。

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